日本のパイロット自社養成に新しく導入された准定期運送用操縦士(MPL)訓練とは?

      2017/09/16

 

2013年後半に話題になったドラマ「ミス・パイロット」では、全日本航空(ANA)のパイロット養成訓練について扱っています。2013年当時はドラマの通りの手順を踏んでパイロットの訓練が行われていたのですが、翌年には大きくその訓練体系が変わっています。

エアライン副操縦士の養成に特化した准定期運送用操縦士ライセンス(MPL)取得訓練に変更されたのです。

スポンサーリンク

エアライン副操縦士養成に特化した資格・准定期運送用操縦士(MPL)が登場

准定期運送用操縦士(Multi-crew Pilot Licence,MPL)は2006年にICAO(国際民間航空機関)で規定された資格で、日本では2011年に法制化、翌2012年から施行されました。この資格はエアラインパイロットの副操縦士向けの資格です。

従来は自家用操縦士、事業用操縦士、計器飛行証明、多発限定免許、型式限定の5つのライセンスを取得する必要がありました。

従来型のエアラインパイロット養成訓練

自家用操縦士技能証明(PPL)・単発機(エンジンが1つの航空機)

事業用操縦士技能証明(CPL)・単発機…プロとして1人で飛ぶことができるライセンス

多発限定免許(ME)…双発機(エンジンが2つ以上の航空機)を操縦するための免許

計器飛行証明(IFR)…計器飛行方式(IFR)で飛ぶための免許

各ボーイング機の型式限定免許取得

副操縦士昇格訓練…路線OJT訓練

2013年以前は上のようなフローチャートでエアラインパイロットの訓練が行われていました。最後の型式限定免許とはボーイング機などの、操縦するのに2人が必要な航空機の免許です。

機長として一人で飛ぶための訓練が多く、エアラインパイロットには不必要な技能の項目が多くあります。

スポンサーリンク

エアラインパイロット副操縦士養成向けのMPL訓練

単発機の自家用操縦士レベル訓練…形式的にPPL試験を受ける

双発ジェット機での計器飛行レベルまでの訓練+マルチクルー訓練

型式限定取得レベルまで訓練(ボーイング機シミュレーター使用)

副操縦士昇格訓練…シミュレーター訓練+実機による12回の離着陸

准定期運送用操縦士受験、合格

路線OJT訓練…実際の定期便のオペレーションでの訓練

准定期運送用操縦士の資格には計器飛行証明・多発限定免許の技能要件が含まれています。また自家用操縦士・事業用操縦士についてはエアラインパイロットとして必要最低限の技能が含まれているのです。

ですので受験する必要がある試験は准定期運送用操縦士技能証明の1つのみということになりますね。

これからしばらくの間は事業用操縦士と准定期運送用操縦士という別々のライセンスを持つ副操縦士が存在することになるのです。このように別々のライセンスを持つ副操縦士は、機長に昇格する際の条件に若干の違いがあります。

定期運送用操縦士(ATPL)受験のための条件の違い

エアラインの機長になるには定期運送用操縦士(ATPL)というライセンスと各航空会社独自の機長昇格訓練を受ける必要があります。定期運送用操縦士の技能証明試験を受験するために必要な飛行経験時間の違いは以下の通りです。

機長監督下における機長業務の経験
事業用操縦士 180時間以上
准定期運送用操縦士 500時間以上

事業用操縦士の場合、もともと機長としての訓練を多く受けているので機長業務の経験が少なくて済みます。逆に准定期運送用操縦士はプロの機長として1人で飛ぶための経験が全くないため、必要な機長業務の経験量が多くなります。

また、准定期運送用操縦士に求められる学科レベルは定期運送用操縦士に求められるレベルと同等なため、機長昇格時には定期運送用操縦士の学科試験は免除となっています。

自社養成訓練を途中でリタイアすると、あとに残るのは単発自家用ライセンスのみ

新しく准定期運送用操縦士ができたことで効率よく、より早くエアラインパイロットになれるようになったのですが同時に訓練生には大きなリスクが残るようになりました。万が一訓練を途中で断念するようなことになったら自家用というアマチュアライセンスしか残らないのです。

准定期運送用操縦士(MPL)の訓練はコスト削減のため、エアラインパイロットに不必要なライセンスは取得しません。つまり、元訓練生が自力でエアラインパイロットを目指す場合、金銭的・時間的負担は従来よりも大きくなるのです。

准定期運送用操縦士が事業用操縦士のライセンスを取得する場合

准定期運送用操縦士が事業用操縦士のライセンスを取得する場合には次のような要件があります。

・10時間以上の機長飛行を含む教官監督下における機長業務70時間以上
・教官監督下における機長業務10時間以上を含む20時間以上の野外飛行 (2つの異なる飛行場での着陸を行う540km以上の飛行を含む)
・10時間以上の計器飛行時間
・機長としての5回以上の離着陸を含む5時間以上の夜間飛行

その上で、必要な知識、能力等が付与されていることについて試験等により確認
(ICAO Annex 1 : 2.5.2.3 )

まとめ

2013年からエアラインの副操縦士として飛ぶために必要な准定期運送用操縦士のライセンスが導入され、効率的で質の良い訓練ができるようになりました。

スポンサーリンク

 



読んでいただきありがとうございます。
この記事はお役に立ちましたか?シェアしていただけるとうれしいです。

社会人4年目のゆとり。陸単自家用ライセンス取得のためカナダに分割渡航で操縦練習中。訓練機にあえてC152を選ぶ変態。グライダーの自家用と教育証明を取得済み。


フォローしていただけるとうれしいです。また、記事に関するコメントはTwitterにてお願いします。

follow us in feedly


Facebookページも始めました。フォロー(いいね!)していただければ、役立つ情報をタイムラインへお届けします。